第70話

「あははっ!違う違う!そうじゃなくて、女の人と付き合ったりした事はあるのかな?と思って」



笑う私を七瀬がチラッと見て、小さく溜息を吐いた。



「ったく、何勝手に想像して笑ってんのよ。私、女の人とは付き合ったことは無いわね。」



七瀬のセリフに、やっぱりだよね?と、ホッとしていると、



「けど、」



と、七瀬が言葉を続けたので、思わず七瀬の横顔を見つめる。



「それは、私が今まで惹かれる女の人に出会った事がなかったからであって、そういう相手に出会えば、女の人と付き合うのもアリだと思うわ。」


「えっ…」



まさかの七瀬からアリ宣言に、自分の顔から表情が消えた気がした。




それって…もしかして、吉田さんの事?




そう喉から言葉が出かけて、何とか押し込めた。

今、聞いてしまうのは、何だか怖い気がした。


仮に、七瀬が吉田さんと付き合っても、私達が『友達』である事に変わりはない。


今までだって、七瀬に付き合ってる人はいたんだもん。

その人達の時と、きっと変わらない。

分かってはいるんだけど、けど、……けど?


そこからは、七瀬とどんな話をしたのかよく覚えていない。それくらい、上の空になっていた。

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