第69話

七瀬の車に乗るのは二回目だけど、なんか妙に緊張する。


二人きりなんて今までしょっちゅうあったけど、密室空間の狭い場所で二人きりは殆ど無い。


別に避けてた訳じゃないけど、今までそういう機会がなかったのだ。


運転する七瀬にもまだ慣れてないからかもしれない。


車に乗ると、「さっきのは冗談だけど、ご飯は食べに行きましょ?」と七瀬が言ったので「うん」と頷いた。


そこからは、いつものように調子を取り戻して七瀬と普通に接する事が出来たので、少しホッとする。


うん、良かった。何とかいつも通りの自分に戻れそう。



そう思ったのも束の間。



なんとなく昼間のガールズトークの内容が気になって、運転する七瀬をチラッと盗み見しつつ、遠回しに聞いてみた。



「ねぇ、七瀬」


「何?」


「七瀬って、男の人が恋愛対象なんだよね?」


「何よ、急に?二階堂君はタイプじゃないわよ?」



そう七瀬に返されて、思わず七瀬と文也が付き合ってる図を想像して笑ってしまった。

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