第66話

「うっぎゃあぁぁ!」



あまりにも突然過ぎて、椅子ごと後ろに身を引いた。



「叫ぶなんて失礼ね。何度も声かけてたんだけど!」



七瀬が腕組みしながら私を見下ろしていた。


なんだ、七瀬か…って、七瀬!?


ビックリして慌てて周りをキョロキョロ見回すと、終業時刻をとっくに過ぎている。


嘘!?いつの間に、そんなに時間が経ってたの!?



「バカみたいに集中ってか、心ここにあらずって感じだったけど、アンタ大丈夫?」



七瀬が不意に身を屈めて、私の顔を覗き込んできた。


ち、近っ!近いってばっ!!


いきなりだったから心の準備が間に合わず、顔がジワっと赤くなっていくのが分かる。




…ヤバイ。




恥ずかしくて、バッと顔を思い切りそらした。


七瀬に指摘されそうで嫌だったので、何でもない風を装って「急がないといけない仕事だったからさ」と、早口で言葉を付け足した。

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