第48話

七瀬がムスッとしながら、ナビに私の住所を打ち込んでいく。


だよね、そりゃ怒るよね。


しばらくは、七瀬の行きたいお店を優先してあげよう、とこっそり心に誓った。



「ご、ごめんね、七瀬?」



うかがうように謝ると、ハンドルを握った七瀬がジロリとこっちを睨んだ。



「済んだことはもういいわよ。謝罪じゃなくて、説明をして頂戴!」


「ゔっ、は、はい。」



ナビの静かな道標音声を聞きながら、私は七瀬に合コンでの出来事を、話して聞かせた。






全て話し終えたところで、七瀬が大きな溜息を吐いた。



「アンタ馬鹿じゃないの?合コンに行っときながら、何で見栄張って嘘つくのよ。」


「ゔぅ、ごもっともです…」



そうだ。そもそもそこから話がここまで大きくなってしまったのだ。あの時嘘付かずにいて、その上で、文也とは戻る気ない事も伝えていれば、ハッピーな合コンの結末を迎えていたかもしれない。


私は、「自分が馬鹿すぎて泣けてくる…」と大きく項垂れた。

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