第47話

文也は去って行く私達に、何も言わなかった。


ただ、背中に突き刺さるような視線はずっと感じていたけれど。


さっきいた場所から少し歩くと、黒のハリアーが止まっているのが見えた。


うわぁ、『外見』の七瀬っぽい!


中身は可愛いもの大好き七瀬からは、想像し難いカッコいい車だ。


七瀬がドアを開けてくれたので、少し緊張しながら乗り込む。隣に何故か、無言で乗り込んだ七瀬にも妙に緊張してしまう。


えーっと、こんなとさせられて、もしかしなくとも七瀬めっちゃ怒ってる?


恐る恐る無言でエンジンをかける七瀬をチラ見する。

と、思いっきり目が合った。



「ひっ!!」


「ひっ!じゃないわよっ!!どういう事なのか説明して頂戴っ!!」



あ、いつもの七瀬だ。

良かった、となんとなくホッとしながら、緊張を解いていく。


やっぱり七瀬はこうでなくっちゃ。男バージョン七瀬は、やたらと緊張するからダメだ。


それでも少し、まださっきのドキドキの余韻を残しつつ、「取り敢えず、先に家の住所は?」とムッとしながら聞かれたので、素直に答えた。

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