5.男バージョン、七瀬

第43話

「…物騒な話が聞こえるな。」



急に後ろから声をかけられて、私も文也も驚いて振り向く。



「あっ、七瀬…」


「ごめん、遅くなって。こちらは?」



いつの間に居たのか、ニッコリ笑いながら七瀬が近付いて来て、文也の方を見て私に向かって小首を傾げた。



「あ、えと、今日の飲み会で一緒だった、二階堂君。」



私のセリフに、七瀬は今日の出来事を一気に把握したのか、ああ、と小さく口だけ動かして、私の肩を自分の方へと引き寄せた。



「俺、七美の彼氏の七瀬です。ここまで七美を送ってくれて、ありがとう。」



そう言って、七瀬がフッと微笑んだ。


えっ!嘘!?

あの七瀬が、『俺』って言った!?


演技だと分かっていても、言えるんだ!?って言う驚きの方が強くて、つい七瀬を凝視してしまった。



「あ、いえ…、」



文也が驚いた表情を隠しもせずに、七瀬を見てる。

そりゃそうだよね。こんな外見だけはモデル並みにカッコいい人が、私の新しい彼氏だなんて信じられないよね、きっと。

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