第40話

電話口で、七瀬が大きな溜息を吐いてる声が聞こえてくる。


やっぱ無理だよね…。諦めようとした時、



『場所は?』



その七瀬の言葉に、私は思わずその場で飛び跳ねた。



「い、いいの!?」


『そんな切羽詰まった声出されたら、行かない訳にはいかないでしょ!ほら、場所は?』


「あ、えと、M駅の南口のロータリーで待ってます!」



七瀬の『了解』という声の後に、電話を切った私は、急いでトイレから出て文也達の所に戻った。


ホッとしたからなのか、さっきより少し帰ることに浮き足立つ私がいて、文也が不思議そうに見てきた。



「じゃあ、気を付けてー」と、美香達に送り出されて、店を後にした私達は、久しぶりに横に並んで歩く。


あの頃と違うところは、手を繋いでいないところ。


少しだけ、感傷に浸ってしまったのか、ちょっとだけ寂しさを感じたけれど、あの頃みたいには、もうこの人と手を繋ぎたいとは思わない。

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