第33話

「何してる人?いくつ?」



文也がグラスを置いて、私を真正面から見てくる。


ゔ…どうしよう。今更嘘なんて言える空気じゃないし、なんて答えよう…?


その時、何故かパッと七瀬の事が頭に浮かんだ。


うーん…取り敢えず、七瀬の特徴をぼやかして言っとこうかな…?勿論、オネエである事を伏せて。



「お、同じ会社の先輩で、歳は三個上。」



あーもう。何が悲しくて、架空の彼氏作んなきゃなんないのよ。嘘ついてる事に、なんとなく後ろめたさみたいなものを感じながら、カシスオレンジを口に含んだ。



「…そっか。俺も菓子事業部にしとけば良かった。そしたら、どんな奴か分かったのにな。」



うん?えっと、それってどういう意味…?

もしかして、私の彼氏の存在を気にしてる?なんて、都合良く考えてしまいそうになる。


けど、正直、文也に気まずさは感じても、もうドキドキするようなときめきは感じていない自分がいて。


曖昧な笑顔を返事の代わりに返した。

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