第30話

びっくりしたまま固まっていると、美香が私と文也の顔を見比べて小首を傾げた。



「あれ?もしかして、二人知り合い?」



なんとも言えずに黙っていると、文也が先に頷いた。



「うん、大学の時の知り合い。久しぶり、七美。」



…知り合い、か。

私の扱いなんてそんなもんだよね…。


正直、別れてから一度も会ってなかったから、物凄く気まずい。


私の様子を見て、空気を読んでくれた美香が、「じゃ、取り敢えず揃ったし乾杯しよっか!」と、私をさりげなく奥の席へと誘導しようとしてくれた、のに。



「七美、俺の前に座ってよ。」



と、文也が私の反対の手をグイッと引っ張った。


はぁぁ!?何で!?


思いっきり顔に出てたのか、文也が苦笑いしながらそれでも無理やり私を目の前の席に座らせた。

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