第26話

なんとなく、七瀬の反応にホッとしている自分がいた。


やっぱり、七瀬は七瀬だ。

あれは、演技だったんだなぁと思うと、単純に凄いと思ってしまった。



「ったく!パスワードが漏れて大騒ぎしてるのかと思ってたのに、肝心な部分はみんな忘れてたのねっ!七美!これじゃあ丸屋のパフェだけじゃ足りないわよ!」



七瀬が、エンジンをかけながら私をキッと睨んできた。



「ゔぅ…、わかってるよ。本当スミマセンデシタ。駅前のケーキも付けます」



駅前のケーキという単語に「それで手を打つわ」と、七瀬がニッと口の端を上げて笑った。


あ、そういえば。

さっき、気になってたんだった。



「何で、私を営業だって言ったの?」



片山さんも、七瀬のセリフで何故か納得してた。

私の問いに、七瀬がチラッと視線を寄越してハァーっと溜め息を吐いた。



「アンタどこの業界に営業差し置いて、事務員が謝罪に行く会社があると思ってんのよ。そんな事してたら、営業の顔は丸潰れじゃない。だから何もするなって言ったのに、七美ったら先走っちゃうから冷や汗かいたわ。」



あ、そうか…!

私ってば、自分のミスの事しか頭になかった…

そんな単純な事も分からないなんて、自分が情けない。


ゔぅ…。なんか、今日は七瀬に恥ずかしいとこばかり見られてる気がして、助手席で小さくなりながら「ゴメンナサイ…」と呟いた。

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