第20話

他社に足を踏み入れる事自体が初めての私は、受付から担当の人がいる階までの道順等全てを七瀬に任せきりになってしまって、自分で行くと言い張った事を情けなく感じていた。


自分じゃ、会社の場所さえもよく分からなかった癖に、謝罪に自分が行くなんて大きな事言って、七瀬はどう思ったんだろう…。


呆れられているのは間違いないんだろうな、と自分のミスと合わせて妙に気持ちが沈んでいく。



応接室に七瀬と二人通されて、緊張しながら立っていると、七瀬が小声で念を押してきた。



「いい?余計な事はしないのよ?」



私は無言で頷きながら、コンコンとノックの後に続くガチャっと扉が開く音に、つい、衝動的に頭を下げて



「申し訳ございませんっ!!」



と、叫んでしまっていた。


隣で小さく七瀬の、チッと舌打ちする音が聞こえた気がした。

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