第16話

それでも、何も悪くない七瀬が怒られるのが嫌だと思った私は、七瀬の歩調に合わせて大股で隣を歩いた。


憎たらしい程に脚の長い七瀬は、一歩が私の二歩分くらいだ。差を見せつけられたようで、少しイラっとしながらも無言で隣を歩く。


エレベーターに乗ったところで、七瀬が肩を竦めながら大きな溜息を吐いた。



「分ーかったわよ!なら、一緒に行きましょ。ただし、余計な事は一切しないで。アンタは付いてくるだけよ?」



釘を刺すように「いい?」と、七瀬が念を押してきた。


私もコクリと頷いて「ありがとう、七瀬」と、俯きながら小さく呟いた。いつも七瀬には仕事が遅いって怒られてばかりいるけれど、こんな形で迷惑をかけてしまったのは初めてで、何だか恥ずかしかった。


七瀬は、フッと鼻で笑うと「丸屋のパフェでチャラにしてあげる」と、私の頭をポンっと一回軽く撫でて、エレベーターを先に降りて行った。

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