第15話

騒つく人混みを掻き分けて、七瀬が私の側にやって来た。


七瀬はエリートなので営業一課に属している。

本来ならば、二課になんて来るような人じゃないけれど、終業時刻をとっくに過ぎているので、私を迎えに来てくれたんだろう。


騒ぎの内容を人に聞いたのか、私の手をグイッと引っ張って七瀬は私の前に出た。



「部長、私が謝罪に行ってきます。」



そう言う七瀬に、部長は七瀬なら大丈夫と思ったのか、


「すまんね、七瀬。担当はA商事の片山様だ。呉々も粗相のないよう宜しく頼む。」


「はい。」


そう言って、七瀬が私の隣を通り過ぎて行く。


何かに弾かれたように頭を上げた私は、部長にもう一度一礼して、すぐに七瀬の後を追いかけた。



「待って七瀬!私が行くっ!」



すると、七瀬が立ち止まってクルッと振り向き、私に人差し指を突き付けた。



「これは営業の仕事なの!一事務員であるアンタが行ったって、何にもならないわ!大人しく帰ってなさい。」



そう言って、七瀬はまたスタスタエレベーターに向かって歩いて行く。

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