82 そして、勇者伝説が始まる(レム視点)


「ねえ、エリオスくん。私と一緒に来てくれないかな?」


 レムは彼を誘った。


「えっ……?」

「突然で驚いたでしょうけど、あなたが発した光は――おそらく【聖なる力】と呼ばれるもの。勇者や聖女……神に選ばれた存在だけが持つ力なの」

「僕が……?」


 エリオスは戸惑った様子だ。


「さっき魔族を倒したすさまじい光は、あなたが発したのよ? それでも納得できない?」

「それは……まあ……」


 それでも半信半疑といった様子だが、エリオスは徐々に状況を理解し始めたようだ。


「さっき、この力に目覚めるときに――気になることがあったんです」


 と、エリオスがレムを見つめた。


「頭の中で、不思議な声が聞こえました」

「声……?」


 もしかしたら、神の意志だろうか。


「そいつは自分のことを【管理者】と名乗っていました」

「えっ?」


 神ではない、ということだろうか?


 それとも――?


「【管理者】は僕にこう言ったんです。『お前は【プレイヤー】として選ばれた』って」

「【プレイヤー】?」


 レムは眉を寄せた。


「どういう意味かしら? 勇者のことを指しているの?」

「分かりません。この世界で特別な役割を持つ者……あるいは、存在自体の次元が違う者――そんな風に言っていました」


 謳うように告げるエリオス。


 どうにも要領を得ない話だった。


「それと。こうも言っていました……【プレイヤー】を探せ、って」


 エリオスは顔を上げた。


 その瞳には、すでに強い意志が宿っているように見えた。


「きっと僕の他にもいるんだ……【プレイヤー】と呼ばれる者が」




 これが――レムと、後に勇者と呼ばれる少年エリオス・クランドールの出会いだった。


 その出会いの先に、何が待っているのか。


 この出会いの先に、世界がどうなっていくのか。


 今はまだ、誰にも分からない――。



****

※次回から主人公ゼル視点に戻ります。


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