34 ミラとの勝負


「ミラ……?」

「俺はこの3番隊のエースは俺になる。今の俺とお前の力の差を確かめたくてな」


 ミラが二本の剣を抜いた。


 彼女の戦闘スタイルは二刀流だ。


「さ、やろうぜ。近くにひと気のない空き地がある」


 と、ミラ。


「こういうときのために見つけておいたんだ」


 ――さては、前から俺に挑もうとしてたんだな、ミラ。


 まあ、彼女が望むなら付き合うか。




 俺とミラは五メートルほどの距離で対峙した。


「へへっ、お前は強い……そんなお前を倒せば、俺がこの部隊のエースってことでいいよな?」


 ミラは目を爛々と輝かせていた。


 両手に一本ずつ剣を携え、構える。


【サイクロミノタウロス】に一度敗れ、かなり落ち込んでいたミラだけど、もうすっかり立ち直ったみたいだな。


 よかった。


『上には上がいる』と語っていた時の、彼女の悲痛な表情は今でも忘れられない。


 それでも、彼女は敗戦から立ち上がり、また上を目指そうとしているんだろう。


 なら俺は彼女の想いに――この剣で応えよう。


 あらためて彼女の構えを見つめた。


 二刀流の相手と戦うのは初めてだ。


 仕掛けるか、受けるか。


 考えているうちに、


「ボーッとしてんじゃねーよ! 俺からいくぜ!」


 ミラが突進してきた。


 速い――!


 さすがに『ソニックブレイダー』だけあって、ミラの身のこなしは敏捷だ。


「くらえ! これが俺の二刀流奥義! 【双竜爆――」

「あ、隙だらけ」


 俺は反射的にカウンターで剣を撃ちこんでしまった。


「はぐうっ!?」


 見事にミラのみぞおちに決まってしまい、悶絶する彼女。


「ぐは、ああ……」

「お、おい、大丈夫か……!?」


 訓練用の剣でやったとはいえ、クリーンヒットだったからな……。


 俺も加減するつもりだったけど、タイミングが良すぎたから、思ったよりダメージを与えてしまったかもしれない。


「へ、平気だ! 鍛えてるからな! はははは……ふげぇ」


 あ、やっぱり苦しそう。


「ごめん……」

「謝んなよ! 勝負での出来事だろ! っていうか、打たれた俺が悪い!」


 と、ミラ。


「……しっかし、強いな。お前……」


 上目遣いににらまれた。


「まだまだ、上には上がいる……」

「ミラ――」

「あ、勘違いするなよ! もう凹まないからな! いや、後でちょっと凹むかもしれねーけど……」


 ミラはぽりぽりと頬をかき、


「……お前が一緒にいてくれるって言うから。俺、がんばるよ。もっと努力して、強くなる」

「ああ。練習ならいつでも相手になるぞ」

「おう、またよろしく」


 ミラがニッと笑った。

 と、


「二人ともすごかったです」


 レキがうっとりした顔で俺たちを見ていた。


「名勝負でした……私、堪能しました」

「じゃあ、次はお前がやってみるか?」


 ミラが突然提案した。


「えっ」

「レキとゼルでやってみてくれよ。見てみたい」


 えっ、レキとも模擬戦をやるのか?







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