第6話 一か八かのデート

Mに励まされてから3日経ったあと、僕は少しずつだがデートの予定を地道に立てていた。以前は映画だったから今回はどうしようとか晩ご飯はどうしようなど色々なことを考えていた。そしてついにデートプランが完成した。これでいいかどうかをMに確認してもらった。「そうだな、このプランで大丈夫だと思うぞ。さあ、今までのお前の思いを全てぶつけてこい!成功を祈っているぞ!」なんと心強い言葉なのだろうか、僕は思わず涙して返事をしてしまった。Mの前で流した初めての涙だった。

デート当日、いつもは約束の時間の30分前には待ち合わせ場所に行くのだが、今回は1時間も早く来てしまった。自分でもびっくりするくらい早かったので近くにあったベンチデート一休みすることにした。約束の時間30分前、いつもならそろそろ楓が来る時間なのだが、今日はなかなか来ない。「どうしたのだろう?」と思い連絡をするが返事が来ない。ソワソワしだした僕はついに探し始めることにした。約束の時間15分前、僕は楓を探すが全く見つからない。連絡もつかない。僕は途方に暮れて先ほど座っていたベンチに座り直した。約束の時間になると楓は姿を現した。「楓…!」僕は思わず大きな声で楓の名前を呼んだ。「なんで今日はこんなに遅かったんだ。」「実はデートが楽しみすぎて服選びに時間がかかっていたの。それで遅くなっちゃった。ごめんなさい。」楓は事情を全て話した。「なんだ、そんなことだったのか。てっきり事故とかに巻き込まれてしまったんかと。」今まで探していた自分が馬鹿みたいに思えてくるほど単純な理由だった。

空はすっかり春の空気に包まれているなか、僕と楓の最後のデートが始まった。僕は今回もあらかじめ楓がどこに行きたいか聞いていた。するの楓は「良介くんの行くところならどこでも行くよ!」と言った。今までと違う反応だったので少し困惑した。悩んだ果てに僕と楓は水族館に行くことにした。「お魚さん可愛い!!」そう横で喜ぶ楓を見て僕は水族館を選んで良かったなと思った。水族館デートを楽しんだ後次は晩ご飯を食べに行こうという話になった。前回はイタリアンレストランに行ったので今回はフランス料理のレストランに行くことにした。「なにこれ!?めっちゃ美味しい!!」楓の笑顔を見る度に僕は楓と付き合って良かったなと思った。

そしてデートのクライマックス、前回はイルミネーションだったが今の季節は春、春と言えばなにか、そう桜である。僕は桜の下で結婚のお誘いをする予定だった。最初に桜の花道を2人で通ったあとその花道の最後のところで立ち止まった。(ついに言う時が来るのか…)緊張しながらも僕は言葉を発した。「僕は今まで長いこと楓と付き合って来たけどそろそろ違う道に歩みたいと思うんだ。」「え、?それってつまり…?」「そう、僕と結婚をしてくれないか?」

第7話へ続く。

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