第85話

「俺、お前にそんな風に毎日軽く告白されるのがずっと嫌だったんだよ」



最後に続いたその言葉に

ガンッと頭を強く殴られる。


それから

世界が色を失う。


夏向さんの言葉が何度も頭の中で響いて

何も考えられなくなる。



好きだと伝え続ければ

いつか夏向さんに届いて、受け入れてもらえると信じていた。


だけど。



“ずっと嫌だったんだよ”



そっか。

……そうだったんだ。


目の前に闇が降りてくる。

足元が崩れて落ちていくようだった。



「……はは、そうですよね。夏向さんずっと迷惑そうにしてましたもんね」



思わず目を伏せながら

私はそう力無く笑う。


夏向さんが私の反応をただ黙ってじっと見ているのが顔を上げなくてもわかる。


どうにか取り繕わなくちゃと思うのに

頭の中がぐちゃぐちゃで、なんだか上手く笑えない。


俯いたままの私は

ゆらりと顔を上げる。


黙ってこちらを見ている夏向さんと目が合って

視線逸らさぬままで、静かに口を開く。

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