第78話

「ねえねえ。瑞希ちゃんって夏向くんと付き合ってるの?」

「え?」



突然のその言葉に

思わずぴくりと肩を跳ねさせてしまう。


私はそっと目を伏せて

へへ、と何かを誤魔化すようにへらりと笑う。



「……付き合ってないですよ」



そう正直に答えた私に

目の前のももさんがどこかほっとしたように小さく息を吐く。


それからももさんは申し訳なさそうに眉を下げると

探るような瞳で私の顔を覗き込みながら、そろりと続けた。



「すごい言いにくいんだけど、後で気まずくなるのも嫌だから先に言っておくね。私、もし夏向くんに告白されたら付き合うつもりだから」



はっきりとした口調だった。


迷いなくそう告げられて

私は呼吸を忘れて固まってしまう。


思わず息を呑んだまま身動きが取れなくなる私に

ももさんは弱く微笑んだまま小さく首を傾げて続ける。

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