第76話

私は夏向さんのことが好きで

夏向さんにも私のことを好きになって欲しくて


ただずっと、それだけを目標に毎日真っ直ぐ気持ちを伝え続けてきた。




私は夏向さんの傍にいられるだけで幸せになれる。


もし、夏向さんにとって

そう思う相手が他にいるとしたら。



もし夏向さんが

他の人と、幸せになれるとしたら、その時は―――。



「―――」



自分の取るべき行動に

本当は気付き始めていた。


私はまるで何かから逃げるように

黙ったまますっと1人目を伏せる。



昼間の廊下。

友達へ気持ちをこっそり打ち明けていた夏向さんの顔が頭を過る。


あの時、夏向さんの目には

分かりやすく好きの気持ちが滲んでいた。



夏向さんの胸の中にいるのは私じゃない。

あんな風に想ってもらえるももさんが、羨ましくて仕方なかった。

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