第71話
「あの坂走って桜の木に触るとお願い事が叶うんですよ」
そう自信満々に答えた私に
修二さんがどこかからかうような目で小さく吹き出す。
「ああ、なんかのジンクスだ。そういえばクラスの女子が話してるの聞いたことある」
そう微かに目を細める修二さんに
そうそうと言わんばかりに私はこくこく激しく頷いてみせる。
ふーん、とあまり興味なさそうに呟いてから
修二さんがにやりとその口元に笑みを浮かべる。
「あれか。夏向か」
「え?」
「だって好きなんでしょ? なに、付き合えますようにとかお願いしてるの?」
そうにやにや悪い顔で笑う修二さんに
私は何故笑われているのかが理解できないまま、それでも頷こうとする。
だけど。
「でもさ、さすがにアピールし過ぎじゃない?」
続いた笑い声に
私は返すはずだった自分の言葉をつい飲み込んでしまう。
思わず黙り込んだ私の
一瞬の隙を突くように、修二さんの言葉が鋭く刺さる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます