第67話
「いい子そうだもんなあ。え、どこが好きなの?」
「いいだろ別に」
「えー、なんだよ教えろよ」
逃げ腰の夏向さんに対して
からかうのをやめようとしない友人さんがしつこくまとわりついているらしい。
しばらく無言を貫いていた夏向さんが
観念したように小さく息を吐くと、諦めたように渋々その口を開いた。
「……笑った顔が可愛いとこ」
そうぶっきらぼうに短く吐き出された言葉に
私の頭の中にも、ぱっとお花が咲いたみたいに笑うももさんの笑顔が蘇る。
ももさんが可愛いことは
私だってよく知っている。
その笑顔を、きっと
いつも夏向さんが目で追いかけていることも。
照れ臭いのか澄ました顔をしようとしているけど
頬を微かに赤くした夏向さんは、何かを思い出すように小さく笑う。
それは私が見たことのない夏向さんの顔だった。
そうか。
ももさんを想う夏向さんは
あんな風に、優しい目で、笑うのか。
息を殺したまま思わず唇を噛み締める私を置き去りに
へえー、と友人さんは何故か嬉しそうに笑っている。
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