第55話

「すみません。そんなところへ隠れさせて」

「……いや。気付かれてると思わなかった」

「時々カバン見えてましたよ。夏向さん、かくれんぼの才能ないです」



そうくすくす笑う私に

どこか気まずそうに夏向さんががしがし頭を掻いている。


その様子をしばらく眺めてから

ふと笑う私は、悪戯っぽい目で夏向さんの顔を覗きこんだ。



「それより聞いてました?あの人私と仲良くなりたかったんですって」

「……へえ」

「明るくていつもにこにこしてて可愛いって思ってくれてたらしいです」



そう思わずふふっと笑う私に

夏向さんはどこか呆れたように目を細める。


そんな夏向さんの目を

真っ直ぐ見上げる私は、にっこり笑った。



「早く夏向さんも私の魅力に気付けばいいのに」



そうふざけたように軽口を叩く私に

夏向さんは何も言わずにため息を吐いて、体育館の方へ歩いて行ってしまう。

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