「君が早く私の魅力に気付きますように」

第52話

6月に入ってからも比較的天気が穏やかな日が続いている。

この日も空がよく晴れていて、綺麗な空が広がっていた。



私はいつものように

朝一番、人気の少ない坂道を全力で駆け上がる。


走って、走って、

辿り着いた頂上。


桜の木の下

そこにはいつもの夏向さんの姿はなかった。



あれ?と

私は思わず立ち止まって、首を傾げる。


入学して以来毎日続けたこの日課

私が坂を駆けてくる頃、夏向さんは必ず木の下に座っていた。


不測の事態に無意識に周囲を見渡そうとして

すぐにあることに気付く。


夏向さんの姿はなかったけど

代わりに見知らぬ男子生徒が木の下に立ってこちらを見ている。


目が合って、なんとなくぺこりと小さく会釈をすると

それに気付いた男子が何故かこちらへ歩み寄ってくる。



「芹沢さん」

「え?」



覚えのない相手から急に名前を呼ばれたことに

驚くあまり、思わず顔を強張らせてしまう。


そんな私の動揺を察したらしく

目の前の人物は少し慌てたように顔を上げた。

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