第49話

「2人でなにしてるの?そのボード出す?」



こちらの事情なんてもちろん知らないももさんが、そう屈託なく笑う。


私はぐちゃぐちゃの気持ちを隠すようにどうにか笑うと

目を伏せたまま、早口で告げる。



「そうなんです。私コーチに呼ばれてて……代わりにお願いしてもいいですか?」

「もちろん!やっておくね」



そうニコニコ笑うももさんにぺこりと頭を下げて

私はまるで逃げるように倉庫を後にする。


振り向くことは出来なかったけど

背後で夏向さんが、手伝うよ、と声を掛けるのが聞こえる。



「ほんと? ありがとう!」



私と違って好意を受け取り慣れているももさんは

可愛らしくそう素直に笑う。


それを確認出来ないまま、2人の顔を見ぬまま急いで倉庫を後にした。






倉庫を後にした私はコーチの元へ向かいながら

無意識にまるで何かから逃げるように駆け出してしまう。


だけど、どこまで逃げても、逃げきれない。

執拗に私を追ってくる闇に飲み込まれないように必死だった。

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