第48話
「えっと、すみません。じゃあ私行きますね」
「……ん」
スコアボードのことは放っておいてと言おうか迷ったけど、これ以上言ってもきっと無駄だとその言葉を静かに飲み込む。
そのまま倉庫を出ようとした
ちょうど、そのタイミング。
「へへ、なかなか練習顔だせなくてごめんね」
出口のドアの向こうでふと声がして
私は思わずぴくりと肩をはねさせてしまう。
姿は見えない。
だけど、声で分かる。
―――ももさんが
部員の誰かと話しながらこちらへ近づいてくる。
それから無意識にちらりと夏向さんの横顔を見る。
さっきまでこちらを見ようとしなかった夏向さんは
ももさんの声に気付いてあっさりと顔を上げる。
ドアの向こう
姿の見えないももさんを目で追いかける。
夏向さんの世界から
一瞬で、私が、消える。
その瞬間を目の当たりにして、私は思わず小さく息を呑んだ。
「っ」
現実がぐさりと刺さって
痛い、と胸が叫ぶ。
無意識に唇を噛んでしまう私は、咄嗟に何かを誤魔化すように顔を伏せる。
視界の端で
夏向さんがそんな私の横顔を見ていて微かに瞳を揺らした気がした。
だけどあっさりと倉庫に入ってきたももさんは
私と夏向さんを見比べて、あれ、と目を丸くした。
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