第47話
「今日はマネ1人じゃないんだし、あんまり1人で頑張るなよ」
そうぽつりと呟いた夏向さんが
俯く私の頭に、ぽん、と手を乗せる。
突然の出来事に思わずはっと顔を上げると
目が合って、夏向さんが驚いたように目を丸くする。
初めて触れた夏向さんの手のひらは
想像以上に熱くて。
たったそれだけのことなのに
この時の私は、絶対、真っ赤な顔をしていた。
え、何その反応。
夏向さんの顔には、分かりやすくそう書いてあった。
いつも好き好きまとわりつくくせに
こんなスキンシップとも言えないような些細な行動に、こんな過剰に反応している自分が恥ずかしかった。
余裕がなくて情けない。
だけど、ももさんみたいには出来ない。
どう取り繕えばいいかも分からずただ黙って夏向さんを見上げていると
私の緊張が伝染したのか、夏向さんもどこか気まずそうにぎくしゃくと私の頭から手を離した。
2人きりの狭い倉庫に
なんとも言えないじれったい沈黙が流れる。
ちらりと夏向さんの顔を盗み見ると
黙ったまま何かを考えるようにただ目を伏せている。
夏向さんは
私の目を見ようとしなかった。
このままここにいても迷惑をかけるだけだ。
コーチの元へ素直に向かおうと決めて、私はどうにか顔を上げる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます