第46話

「あれ、夏向さん私に会いにきてくれたんですか?」

「……あっちでコーチが瑞希のこと探してた」

「なーんだ。わかりました、すぐ行きます」



夏向さんに私は出そうとしていたボードから手を離して慌ててその場を駆け出そうとする。

そんな私とスコアボードを交互に見比べて、夏向さんが不思議そうに首を小さく傾げた。



「そのボード出すなら俺やっとくけど」

「え? いいですいいです置いておいて。戻ったら私がやりますから」

「なんで? それくらい別に。本当無駄に真面目だな」



そう私からの制止を振り切って

夏向さんが体育倉庫に入ってくる。


それを慌てて止めようと

反射的に夏向さんの腕を掴もうとする。


だけど。


さっきのコートの隅。

この腕にももさんが触れていたさっきの光景が頭の隅をちらついて



「―――」



無意識に私は、夏向さんに触れるのを踏みとどまってしまう。


なんとなくだけど

私にはこの腕に気安く触れていい資格はないような気がした。



そんな私の気持ちを知らない夏向さんは

思わず固まる私を見下ろして少しだけきょとんとしてから、小さくため息を吐く。

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