第45話

にこにこ楽しそうなももさんに話かけられて、夏向さんもどこか嬉しそうに見える。


夏向さんがあんな顔するなんて、一体、何の話してるんだろう。

気になってつい耳を澄ませてみるけど、ざわつく体育館の中では、その会話の内容は聞こえない。



気にしないように一応してみるけど

それでも無意識に、2人の姿を何度もこっそり盗み見てしまう。



私と違ってすらりと背が高いももさんだとバランスもいい。

美男美女で誰がどう見てもお似合いだった。


時々ももさんが懐っこく笑いながら

夏向さんの腕にぽん、と軽く手を触れる。


盗み見たあまりにも自然なその仕草に、胸の奥が、ぎゅっとなる。


私は無意識に逃げるように

楽しそうに話す2人から目を逸らす。


2人の会話は聞こえないはずなのに

まるで笑い声が聞こえるみたいで、何だかすごく耳障りだった。









「瑞希、ここにいたのか」



体育倉庫で、他の道具に引っ掛かってなかなか出せないスコアボードと格闘していた私は名前を呼ばれてふと振り返る。


一人きりだったはずの倉庫。

その出入り口には、さっきまでいなかったはずの、夏向さんの姿があった。

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