第43話

まるで誰かを探すようにきょろきょろ体育館を見渡すももさんが

やがて何かに気付いて、あ、と嬉しそうに目を輝かせる。


それからももさんが駆け寄った先には

ハンドルをカラカラ回して体育館の上部の窓を開ける、夏向さんがいた。



「―――」



それに思わず息を呑んでしまう私は

小さな動揺を悟られぬように再びモップがけを始めた。


ちょうど、その時。



「おっと危ない」



前をよく見ていなかった私は

モップを持ったままずんずん進んで部員の1人を轢きかけてしまう。


思わずはっと青ざめて立ち止まる私を

大袈裟にモップを避けるモーションをかました先輩がまるでからかうように笑った。



「瑞希何暴走してんの」

「わあ!ごめんなさい修二さん!」



そう慌てて頭を下げる私を

修二さんは何故かケラケラ楽しそうに笑っている。


この修二さんは2年生の先輩で

いつも明るくてお喋りが好きなこの人は部内でもムードメーカー的な存在だった。


背が低く少し長めの茶色い癖毛をピンで止めているせいか、どこか中性的な雰囲気で初めからとても親しみやすかった。


ひとしきり笑い終えた後

顔を上げて何かに気付いた修二さんが、あれ、と小さく首を傾げる。

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