第42話
「そっか。愛弓は知ってたんだ。知ってて諦めろって言ってくれてたんだね」
「……ごめん」
何に対する謝罪なのか
1つも悪いことなんてしてないはずの愛弓が罰が悪そうに俯いたままなかなか顔を上げてくれない。
そんな友人をしばらくじっと見つめてから
私は口元にゆっくり笑みを浮かべると愛弓の顔を覗き込んで見せる。
「私なら大丈夫だよ」
「え?」
「夏向さんのこと、いつか絶対振り向かせるから。だからそんな顔しないで」
そう微笑んで見せる私に
愛弓はしばらく黙り込んでから、ようやく小さく笑顔を見せる。
そう。これでいい。
無理は承知で好きでいるのは私の勝手だ。
私はただこうして笑っていればいい。
そう自分に小さく言い聞かせて、私は念の為もう一度瞳を細めて愛弓に笑いかけて見せた。
同じ日の放課後。
練習前にコートのモップがけをしている途中、“ある光景”に気付いて私は思わず足を止めた。
コートの片隅、目線の先には
珍しく練習に顔を出した―――ももさんの姿があった。
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