第39話
「夏向さん、大好きです!」
堪らず大きく叫んだ気持ちが
2人きりの体育館に反響する。
驚いたように慌てて振り返る夏向さんは、いつもみたいに呆れた目をしていた。
だけどそんなこと関係なかった。
止まることなんて出来そうになかった。
夏向さんが私を好きじゃなくたって
私は、ずっと、昔から。
「大好きだからずっと応援してます。私はこれからも夏向さんの味方です」
そう迷いなく宣言する私に
無意識なのか、夏向さんは誰もいないはずの体育館をちらりと見渡す。
周りに誰もいないことにほっとしたらしく
ほっと息を吐いた夏向さんが、私を肩越しに振り返ったまま、小さく笑った。
「重いんだよ、ばーか」
そう笑う夏向さんに、胸が、ぎゅっとなる。
それは多分、私に向けられた初めての笑顔だった。
中学時代の夏の日。
夏向さんに恋に落ちた日。
コートの中を嬉しそうに走る、私が大好きな夏向さんの笑顔だった。
背を向けて部室の方へ行ってしまう夏向さんの背中を見つめながら、私は何故か、もう一度泣きたくなる。
だけどどうにかそれを堪えて
夏向さんの去っていく背中を見つめたまま、そっと笑う。
明日の朝もきっと
私はあの桜の木を目指す。
全力で坂を駆け上がって見せるから
―――どうか明日からも、また、夏向さんが笑顔でいてくれますように。
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