第33話
「先輩私パス出すんでシュートの調整しましょ」
そう明るく笑う私は倉庫からボールの入ったカゴを引き出しながら夏向さんを振り返る。
視線が合って、意外そうに目を丸くする夏向さんに、私はにこにこ笑ったままカゴからボールを1つ掴んで夏向さんへ向かって投げた。
「ほら、早く早く。夏向さんはたくさん練習した分今日の試合にも絶対に勝つって信じてますから」
そうガッツポーズをする私をぽかんと見つめてから
その後に呆れたように夏向さんがその肩を弱くすくめる。
「……お前、本当に変わってるな。普通こんなこと言われてパス出すなんて言わないと思うけど」
「失礼ですね。一応中学の時はプレイヤーだったんですから、パスくらい出せますよ」
何故か少し困ったように眉を下げる夏向さんに
私はむっとして言い返してから、ボールのカゴをゴール下まで運ぶ。
「さあ、やりますよ!」
そう張り切って振り返ると
朝日の差し込むコートの真ん中で立ちすくんでいた夏向さんが、その口元に微かに笑みを浮かべたような気がした。
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