第32話
この日は公式戦のトーナメントが始まる当日で、部員達は午後から試合会場の別の高校で現地集合する予定だった。
だけど夏向さんは試合前に、今日も朝この体育館へ練習をしに来ると思ったし
多分、夏向さんも、私がそう思ってここに現れると分かっていたと思う。
朝練の予定も元々ないせいか、着替えて体育館の扉を開くと、中には誰もいなかった。
「わ、2人きりですね、夏向さん」
珍しいシチュエーションに流石にそう心を躍らせる私に、夏向さんは「あっそ」と興味なさそうに吐き捨てる。
温度感があるのは重々承知の上、私はアクセルを踏んできゃあきゃあ1人で盛り上がってしまう。
「他の部員さん達気を遣ってくれたんですかね!たまには2人にしてやろうって」
「もしそうだとしたらお前が休んで他の部員が来てくれた方がずっといいわ」
そう嫌悪感を剥き出す夏向さんに
私は思わず黙り込んでしまう。
いつもなら言い返す私が急に黙り込んだせいか、夏向さんが少しだけはっとしてから、まるで様子を窺うようにちらりとこちらを見てくる。
言い過ぎた。
そう慌てているように見えて、その仕草に思わず1人で笑ってしまう。
冷たくされるのは、別に慣れてる。
今更そんなこと言われたくらいで、傷付いたりなんか、しないのに。
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