第23話

「もも、誰?」

「あ。マネの後輩。中学も一緒にバスケやってたから付き合い長い子なんだ」



そう甘えたような声色で振り返るももさんは、きちんとお化粧された目元で可愛らしく隣の男の人を見上げる。

一緒にいた男性は知らない人だったけど、肩からサッカー部のエナメルバックを下げている。


こんなところで会うなんて珍しいなと思ったけど、そういえばこの水飲み場の先には確かサッカー部の部室があったはずだ。


そして同時に、直前の申し訳なさそうなパフォーマンスは、この人へのアピールだったと気付く。



……彼氏、かな。



そう思うけど確認する理由も勇気もなくて黙る私に、ももさんは小さく笑ったまま可愛く小首を傾げた。



「私はもともと高校ではバスケやらないって決めてたけど、瑞希ちゃんは何で辞めちゃったの? 女バス入ってバスケ続ければよかったのに」



何が言いたいのか、何を言わせたいのか

意図のよく分からない質問が飛んできて、一瞬気持ちが怯む。


だけどそれを顔に出さないように気をつけて

私はへらりと笑うと、困ったように眉を下げたまま首を左右に振った。

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