第24話

「いやいや、私は背も伸びなかったしそもそも自分にセンスないって気付いたんで。だったら少しでもサポートできる立場の方が楽しいかなーって」

「あれ?そうなの?」



私の答えに、ももさんが大袈裟に目を丸くする。


その反応に思わず首を傾げる私に

ももさんはくすっと小さく笑って、私の顔を覗き込んでくる。



「瑞希ちゃんはてっきり夏向くんが目当てで入部したんだと思ってた」



続いた言葉に、つい言葉を失って黙り込んでしまう。


数秒硬直してから、手元のジャーから水が溢れ出ているのに気付いて慌てて蛇口を捻る。

露骨に動揺する私に、ももさんは変わらず悪びれる様子もなくくすくす肩を揺らしている。


何をどこまで知っているのか。

悪意があるのかないのか。


よく分からない綺麗な顔をしたままももさんがにっこり笑う。



「別におかしいことじゃないよ。彼氏欲しくてマネやってる子なんてたくさんいるもん」



何がおかしいのかそう笑うももさんは

しばらくして笑い終えたのか、水道に手をかけたまま固まる私の顔を覗き込んでゆるりと口元を歪める。

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