「君が傷付いていませんように」

第21話

5月末のある日。

放課後練習の途中で私はウォーターサーバーのドリンクが残り少ないことに気付く。


コートの四隅からかき集めた軽くなったジャーを

持ちにくさに手こずりながらもどうにか取手を握りしめたまま走る。



少しずつ暑くなってきていつもよりドリンクの減りが早い。

今週末からインターハイの予選が始まることもあって、部員全員が気合いが入ってる証拠だとも思う。


部員達が休憩を取る前に作り直さないとと私は体育館脇の水道へ小走りで向かった。



梅雨入りはまだまだ先なはずだけど、ここ最近ぐずついた天気が続いている。

曇り空の下、吸い込んだ外の空気からは微かに露の香りがした。



急いでたどり着いた水飲み場には誰も人がいなかった。

それをいいことにどさりと荷物を広げて、ずらりと横に並んだ蛇口をいくつもひねると流水を4つのジャーで同時に受け止める。


中に水が貯まるのを待ちながら

手持ち無沙汰でふと顔を上げると、私は“ある人物”の姿に気付いて思わず目を見開いた。

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