第17話

授業中、英語の板書をノートに写しながら

私は無意識にふともう一度綺麗に晴れたままの空を見上げる。


明るい空を見ているだけで

なんとなく自分の気持ちも明るくなる。


胸の奥の奥。

微かに燻る感情が、上塗りされる。



“どう考えても脈なしだし、好きな人にそんなこと言われたら普通傷つくよ”



耳の奥何度も響く愛弓の言葉に

耳を塞ぐ代わりに私は静かに目を閉じた。









「来るなって言ったのに」

「あれ?そんなこと言われましたっけ?」



翌日の朝。

いつも通りに坂を登り切ると、姿を現した私に夏向さんが呆れたように目を細める。


すっとぼける私に無言でため息を吐く夏向さんに

私も黙って静かに歩み寄ると、座ったままの彼の顔を覗き込むようにして笑う。



「分かってますよ。夏向さんは私に気を遣ってくれたんでしょ?」

「え?」



そうつい微笑んでしまう私を見上げて

夏向さんが不思議そうに首を傾げる。



“別にマネージャーはわざわざ早起きしてまで朝練なんて来なくてもいいだろ”



昨日の夏向さんの言葉は、一見私を拒絶するだけのものに聞こえる。


だけど、きっとそれだけじゃない。


言い方があまり上手ではないけど

この人が優しい人だと、私はもう知っている。



「来てくれなくても大丈夫だよって言ってくれようとしたんですよね」



そうあっさり笑う私に

夏向さんが驚いたように目を丸くする。


それから何故か気まずそうにふいっと視線を逸らしてしまう彼に、私はふふっと思わず笑みを零してしまう。

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