第15話

入学後、席が近いことがきっかけで仲良くなって、私はすぐに夏向さんの存在と桜の木のジンクスについて愛弓へ打ち明けた。



「ジンクスなんて信じてるの?」



私の話を聞いて第一声、愛弓は驚きのあまりストレートにそんな感想を漏らした。


私に比べていくらか恋愛の経験があるらしい愛弓は

やれ“好きばれ”は悪手だの、やれ押しすぎはよくないたまには引けだのとアドバイスをくれた。



ジンクスよりも私を信じろ、と。



だけど私があまりにもそれを聞き入れる素振りを見せないせいか、今ではすっかりそんなことは言わなくなってしまった。



愛弓は今朝の夏向さんを思い出してはまだ夢ごごちの私をしばらく見つめてから、小さくため息をついてから弱く微笑んだ。



「でもさ、流石にもう諦めた方がいいんじゃない? 男なら他にもたくさんいるし」

「やだ。夏向さんの彼女になりたい」

「瑞希明るくていつもにこにこしてて可愛いって陰でモテてるよ。私、この間も友達に紹介してって言われたもん」

「えー、嬉しい!」



その言葉についぱっと顔を輝かせてしまう私に、愛弓も何故か嬉しそうに一緒に笑ってくれる。


愛弓の笑顔を横目で見つつ、私は教室の窓から空を見上げると、あーあ、と小さくため息を吐いて机に頬杖をついた。



「夏向さんも早く私の魅力に気付いてくれないかなあ」



そう遠い目で呟く私に

愛弓の表情に呆れ色が一瞬で舞い戻る。


その様子を見て思わずぷっと小さく吹き出すと

私は肩をすくめて、愛弓の顔を覗き込んで笑った。

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