第12話
「だから今日以外もずっとダメだって」
「それは分からないっていつも言ってるでしょ」
今日もつれない態度の夏向さんに
私はむくれながら、つい唇を尖らせてしまう。
だけど直後に開き直ると、身を屈めて、夏向さんの顔を覗き込むようにしてにっこり笑う。
「いいんです。いつか好きになってもらえるまでずっと待ってますから」
そう真っ直ぐ夏向さんを見つめると
一瞬たじろいだように、その瞳が弱く揺れる。
だけどそれは感情を持つことのないまま、すっと元の位置へ収まると深く沈んだような黒を帯びる。
今日も私に興味がないことは分かった。
これ以上深追いしても無駄だと見限りをつけると、私は前屈みの上半身を起こして、さっさと体育館へ向かって一歩踏み出す。
「さ。早く朝練行きましょ」
そう笑う私の切り替えの早さに
夏向さんはどこか呆れたようにその目を細くする。
それからもう一度ため息を吐き出した彼は、すっと立ち上がって私を追い越す形で朝練に向かう道を歩き始める。
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