「君と毎日挨拶できますように」

第11話

五月晴れの綺麗な青空。

その日は雲ひとつない晴天だった。


晴れ空の下、坂道を駆け上がる。


天気がいいだけで気分が明るくなる。

何だか、いいことがありそうな予感がした。



「おはようございます、夏向さん!今日も大好きです!付き合ってくださーい!」



いつも通り坂を駆け上がった私は桜の木へ手をついて、夏向さんに元気よく声をかける。



「……お断りします」



私の声に座ったままゆっくり顔を上げる夏向さんは、これまたいつも通りにイヤホンを外して嫌そうに顔を顰めた。



「ちぇっ、ダメか。今日はいける気がしたのに」



そうついへらへらする私を夏向さんがちらりと見上げてくる。

なんでだよ、とでも言いたげなその瞳に、今日は天気がいいからです、と心の中で自信満々に答える。


私のテレパシーが届いたのかは分からないけど、夏向さんは黙ったまま目を逸らして面倒臭そうにため息を吐いた。

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