第10話

“絶対お前のこと好きになんてならない”



脳裏にこびりつく夏向さんの言葉を、消し去りたくて無意識に俯いてしまう。



何度気持ちを伝えても、夏向さんの態度は相変わらず冷たい。

しつこい私に容赦なくきつい言葉を投げてくる。



疎ましがられているのは分かってる。

だけど、諦めるつもりはなかった。



今日は駄目でも

それでも、いつか


―――夏向さんは私のことを好きになってくれると信じてる。



だから大丈夫。

……大丈夫。



「―――」



私は無意識に一瞬だけ小さく唇を噛み締めてから、そう自分を奮うように勢いよく顔を上げると離れていく夏向さんの背中を追いかけた。


すっかり散ってしまった、刃こぼれしたみたいなまばらな葉桜が、私のことを黙って見下ろしていた。

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