第6話
気持ちを受け入れてもらえなかったことを、一応理解はしようとしてみた。
だけど、どうしても諦められなかった。
夏向さんを追いかけるように同じ高校を受験し、桜の木のジンクスを聞いた私は、入学式の日早速試しに坂を駆け上がってみることにした。
その坂は走ってみると見た目以上に長く急で、部活を引退して以来すっかり運動不足の私には過酷な傾斜だった。
桜の木までたどり着いたら
願うことは初めから決めていた。
―――大好きなあの人に、どうかもう一度、会えますように。
もつれる足でどうにか坂を登り切った時
私はあることに気付いて、思わずはっと足を止める。
散り始めの桜の木の下に座っていた人物が、私に気付いてふと顔を上げる。
信じられなかった。
そこにいた―――夏向さんと
目が合った瞬間、私は呼吸の仕方を、忘れた。
春の風がさあっと音を立てて吹き抜ける。
桜の花びらがはらはら落ちる。
何かの始まりを予感して、私は自分の胸が確かに高揚するのを感じた。
夏向さんは驚いたようにただ目を丸くしている。
ただじっと固まる彼に、私は乱れた呼吸をどうにか整えて、小さく笑った。
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