第5話

「じゃあどうすればいいですか?」

「……え?」

「夏向さんはどうしたら私のこと好きになってくれますか?」



怯まずあっさりそう尋ねる私に、夏向さんの瞳が驚いたように僅かに揺れる。

それをしっかり捉えて、覗き込むように真っ直ぐ見つめたまま、私は小さく笑った。



「私、どうしても夏向さんの彼女になりたいです」



猛進して身を乗り出す私に、夏向さんが微かにたじろぐ。

だけど直後、何かを思い直したように目を細めると、ため息を吐いてから低い声で呟く。



「ごめん、無理」

「え?」

「好きになんてならない。迷惑だからこれ以上付き纏うのもやめてほしい」



そう言い放つ夏向さんは、それから冷たくどこか疎ましそうに私をじろりと睨んだ。



「俺、他に好きな子がいるから」



突き放すようにそう言い残した夏向さんは私に背を向けた。

あの日の私は、去っていくその後ろ姿をぼんやり眺めることしか出来なかった。



初めての恋は、あっという間に散って

私は初めて失恋をした。

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