第4話

始まりは些細なきっかけだった。

それから夏向さんを気付けばいつも目で追うようになった。



目立たなくて初めは気付かなかったけど、夏向さんはいつも誰よりも先にコートに来てモップがけをしてくれていた。


移動の時、皆が嫌がりそうな重い荷物を黙って率先して持つ姿も何度も見かけた。



誰に褒められるわけでもなくとも、静かに気配りが出来る人で

見ていれば優しい人だとすぐに分かった。


次第に夏向さんのことばかり考えるようになり、その気持ちが恋だと気付くのに、それほど時間はかからなかった。



誰かを好きになるのなんて初めてだったけど、自覚したら何だかもう黙っていられなかった。

すぐに体育館裏に夏向さんを呼び出すと、私は自分の気持ちを伝えた。



「好きです、付き合って下さい」



初めて気持ちを伝えた時、緊張から少しだけ声が震えた。


気付かれたどうかは分からない。

夏向さんは私からの突然の告白に、ただ驚いたように目を丸くした。


出来ればあの日みたいに笑って欲しかったのに、夏向さんは迷惑そうにため息を吐いた。



「悪いけど出来ない」



言葉とは裏腹に

悪びれる素振りもなく夏向さんは冷たい目を伏せてあっさりと私の気持ちを切り捨てた。


そう言い残してさっさとその場を去っていこうとする夏向さんを呼び止めて、私は思わず首を傾げてしまう。

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