第2話
厳しい傾斜を登り終えた先。
開けた視界の真ん中で堂々とそびえる桜の木を囲うように備えられたベンチに、今日も“彼”は座っていた。
思わず顔が勝手ににやける。
そのまま飛び込むようにその人物の元へ駆け寄ると、私は桜の木にぱんっと両手で触れて、思い切り笑った。
「
身長150cmの小柄な身体を目一杯使ってそう勢いよく叫ぶ私に
座っていたその人物が耳にしていたイヤホンを外して、少し迷惑そうにその顔を顰める。
「……お前さあ、挨拶みたいに毎日告白してくるのいい加減やめてくれない?」
「お前じゃなくて瑞希ですよ!
そう少し不服そうに眉を寄せる私に、あっそ、と興味なさそうに応えて夏向さんは外したワイヤレスイヤホンをケースにしまう。
それきり顔を上げようともしない夏向さんに、私はめげずにその顔を覗き込むようにして笑う。
「それに挨拶なんかじゃないです、毎日100%全力で気持ち込めてますから」
「いやいや、どう考えても冗談にしか聞こえねぇよ」
そう心底呆れたようにため息を吐き出すと、夏向さんはイヤホンをエナメルバックの中に放り込んですっと立ち上がって私に背を向けた。
夏向さんは、私の中学時代からの先輩だった。
私は当時夏向さんと同じバスケ部に所属していた。
小さな中学だったから、他の部活とのローテーションの都合で女バスと男バスは同じコートで練習することが多かった。
その片隅に
いつでもひっそり佇むように夏向さんの姿はあった。
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