「君にもう一度会えますように」

第1話

私が通う高校にはジンクスがある。


校舎裏、長い坂の上には大きな桜の木があって、坂を一息で駆け上がって木に触れ祈るとその願いが叶うらしい。




私には叶えたい“願い”があった。



今日は駄目でも

明日は出来るかもしれない。


どうしても諦められなかった。

―――だから私は、今日も坂を走る。










桜もすっかり散り終えた4月の下旬。

私は、春の麗かな空と、目の前にそびえる長い坂をぐっと見上げる。


それから大きく息を吸い込むと

黒髪ポニーテールと制服の膝上スカートを翻して、そのまま目の前の坂道を駆け上がる。



丸くて柔らかい4月の優しい陽の中。

吸い込んだ朝一番の空気は凛として、僅かに冷えて透き通っている。


坂道を蹴る度、背負ったリュックが腰の辺りでぼこぼこ揺れる。

すれ違う人が時々こちらを振り返るけど、私は振り返らず夢中で走り続ける。



息が上がる。

だけど、足は止めない。



坂の上、今日も待っているはずの“ゴール”しか、私には見えていなかった。

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