第43話
「やっぱ今回の美里の婚約が原因だったりする?」
「…そう見えるか?」
うん、いや、まぁ。
それくらいしか思い当たる事ないし。
美里もその事でかなり悩んでるみたいだし。
にも関わらず文化祭中はずっとあのリアル王子様の相手しなきゃいけねぇみたいだし。
確か今日は美里の家族とあのリアル王子様とで、食事会するとか何とか聞いたような。
美里の親は結婚に賛成で、兄貴達は反対してんだよな。
大丈夫かな美里…。
板挟みで困ってなきゃいいけど…って、困ってるに決まってるよな。
大丈夫、かな…。
「さっき彼女にも言ったように月岡に恋愛感情は持ってない、今はな。」
「今は?」
「…俺の初恋はアイツだった、子供の頃の話だ。」
「おー。」
栗山の言葉に驚き半分納得半分。
ちょっとした喚声が口をついて出た。
いや、うん、分かるよ分かる。
子供の頃の美里、聞くまでもなく可愛かったに違いないリアルえんじぇるだったに違いない。
まぁ今もリアルえんじぇるだけど。
子供ってまた別格の可愛さがあるもんな。
…アルバムとかねぇのかな?
あったら今度見してもらおっと。
「物心ついた頃から一緒で、兄妹みたいに育ったせいかは分からないが。
子供ながらに『コイツは俺が守らなきゃ』って決心したのを、今でも覚えてる。」
そう言って過去を振り返る栗山の瞳は、懐かしさと少しの照れ臭さに満ちていて。
それだけで、栗山がどれだけ美里を大事に想ってきたのかが分かるような気がした。
「だが成長するにつれ、月岡に対する恋心は淡く風化していった。
それよりもアイツの事が大切で、大切で、決して傷付く事のないよう守りたいという気持ちが大半を占めるようになっていったんだ。」
「…?それって恋愛感情とは違うのか?」
疑問に思った事がそのまま口をついて出た。
だって栗山の話を聞いた限りじゃ、守りたいって気持ちが恋に発展したのに。
その守りたいって気持ちが強くなったら、恋は消えてなくなってしまったって事で。
それがすごく不思議で。
まさやんに出会って、俺も初恋を経験して。
ちょっとだけ恋愛ってのが分かったような気がしてたのに。
クリリンによって恋愛のまた新たな一面を見せられたような気がして。
やっぱり不思議な事の方が多くて。
気が付けば俺はまるで何も知らないガキみたいに、栗山に純粋な疑問を投げ掛けていたのだった。
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