第41話
一方の俺も目をパチクリさせながらも、何となく予想できた展開なだけに特に驚きはしなかった。
だって…
「…アイツの事を何も知らずに悪く言うのは、止めてくれないか。」
俺に決闘を申し込むぐらい美里バカな男だぜ?
例え相手が女の子とは言え、美里の悪口言われて何も反応しないクリリンじゃないからね。
「誤解してるようだが、俺と月岡の間に特別な男女関係はない。
俺が君達の告白を断るのは、今は恋愛よりも他に優先したい事があるからで、アイツは一切関係ない。」
さっきより幾分か口調は柔らかいものの、淡々と言葉を続ける栗山。
その中には相手に対する強い拒絶が見えて、女の子の顔が青くなっていくのが遠目からでも分かった。
心地いい秋風がこの時ばかりは肌寒く感じ、場の空気が一際冷たくなるのを感じた。
そして…
「だが月岡は俺にとって大切な幼なじみだ、アイツに危害を加える者を俺は決して許さないだろう。
…君がその対象にならない事を願いたい。」
そう言って女の子を射抜く栗山の瞳には、底の見えない真っ青な湖のような深遠さが垣間見えた。
決して怒ってるわけでもなければ、敵視してるわけでもない。
けど二人の間に明らかに一線を引いた栗山の言葉に、彼女の目からポロポロと大粒の涙が零れ落ちるのが見えた。
その子は栗山に小さく頭を下げると、俺が居るのとは反対方向に泣きながら立ち去って行ったのだった。
(……美里の事が好きだって言われるよりキツいだろうな、アレは。)
その後ろ姿を見送りながら思ったのはそんな感想。
あの子にとって、栗山に対する恋愛感情が一番優先すべきモノだとしたら。
栗山にとっては誰かに対する恋愛感情よりも、大切な幼なじみの方が優先順位が上だって事だもんな。
恋愛関係を超越した特別な存在だって、言われたようなもんだもんな…。
(どっちの気持ちも分かるかも…。)
無意識の内に俺が女の子の方に感情移入しちゃってたのは、最近になって自分も初恋を経験したからか。
ただ栗山の言い分ももっともだと思うのは、俺が美里寄りの人間だからか。
そうやって最近恋愛に関して色々と考える事が多くなったのは、やっぱプリンスとノエルちゃんの影響が大きいんだろうなぁ…。
ま、今は俺の事は置いといて。
取りあえず、まず俺がしなきゃいけないのは…
――ザクッ…
「よっ、お疲れ栗山。」
「!…黒崎、」
デバガメしちゃった事をクリリンに謝らないと、ね。
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