第34話
生徒会と風紀の仕事が忙しくて、準備期間中クラスにほとんど顔を出せなかった俺たち。
文化祭中も仕事が詰まっててクラスの出し物に参加できないから、その代わりにっつって委員長の小林さんから宣伝係に任命されたんだよね。
『コスプレ写真館、ナースにメイド、衣装百種類以上取り揃え!』的なうたい文句がプラカードに書かれてますけども何か。
気分はちょっぴりキャバクラの呼び込み係ですけども何か。
「ママっ、あの人たち頭からお耳生えてるっ!」
「こら、人に指を差しちゃだめでしょ。」
…プラス俺の頭にはネコ耳が、隣を並ぶフラミンゴの頭にはウサ耳がつけられてますけども何か。
嫌がらせではなく宣伝目的ですコレは。
辱めではなく宣伝目的なんですコレは。
そう自分に言い聞かせないと、擦れ違う奥様方の奇異な視線と無邪気な子供のキラキラ熱視線に負けそうなんです俺は。
「トキは午後から何の仕事?」
「クイズ大会の司会〜。
あと夕方に花火打ち上げるから、その最終打ち合わせとか〜…」
たこ焼きを食べ終え、雑談をしながら賑わう校舎の廊下を歩く。
いやいや、遊んでるわけじゃないよ。
生徒会と風紀合同の見回りの最中だよお仕事中なんだよ。
明日は来場客が倍以上になるらしいから、今の内に機材の不備や改善点がないかチェックして回ってんの。
んでもってそのついでにコスプレ写真館の宣伝をしてるってわけだよ。
役員持ちは文化祭での自由時間とかほとんどないんだよね。特に二日目は。
だからちょっとの買い食いは許してにゃんにゃん。
「にしても風紀の制服暑そうだな、真っ黒で。」
「見た目より涼しいよ〜、素材的には生徒会の方が暑いんじゃない〜?」
そう言ってお互いを見る俺とトキは制服でもなければ私服でもなく、それぞれ生徒会と風紀専用のユニフォームを身に纏っていた。
トキが着てんのは黒の軍服。
背広姿でネクタイ着用。
袖には金糸の刺繍が入ってて、胸んとこには記章に見立てた【鈴蘭】の校章バッチが。
腰にはサーベルのレプリカがぶら下がってて、足元はブーツで固められてる。
一方の俺は白の軍服。
つってもトキみたく背広じゃなく、ファンタジーに出てくる騎士みたいな格好。
詰め襟で、中央で金のボタンで留めてある。
裾や袖も金糸で唐草模様に似た刺繍が施されていて、足元は白のブーツ。
コスプレ感が強いけどコスプレじゃないよ、役員専用のオーダーメイドな制服さ。
…って、プラカード引っさげてネコ耳着けてる俺が言っても説得力にゃいだろうけど。
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