第32話

(にしても凄い面子だよなコレ…今更だけど。)




学園の絶対的王様。


微笑みのプリンス。


異国のリアル王子様。



プラス俺、って…。



一人だけ異物感がハンパないし。

お小姓的な庶民感がハンパないし。


それを嘆くほどの感性は持ち合わせちゃいないけども。





『外部生という事は所謂一般階級の出であろうに、それが生徒会入りとは随分出世したものだな。


それほど有能な男には見えないが…』



『なかなか大した男だぜぇソイツは、何せ聡一郎の命の恩人だからなぁ。』



『ああ、これが例の…。』




バ会長の言葉に再び留学生の目が俺を捉える。

未だもみんこ中の俺を捉える。



つかアンタ等、これから夜会か何かがあったんじゃねぇの?

こんなとこでゆっくり寛いでていいわけ?


この場合プリンスも忘れちゃってる感じか?

時間大丈夫ですかって言った方がいいのかな?


もみんこが終わったら聞いてみよっと。




もみもみもみ。


もみもみもみ。






『それにソイツは、お前の婚約者が惚れた男でもあるしなぁ。』





もみもみもみ。





……





(……ん?)




しん…と。


飛び交っていた異国の言葉が消え、不自然なまでの沈黙が場を支配していた。



隣のプリンスを見れば眉間にシワを寄せながら瞑目し、片手でコメカミを押さえていて。


斜め向かいのバ会長を見れば何が愉しいのかニヤリと笑いながら煙を吹かし、俺を見ていて。



そして…





『…ほお、それは初耳だな。』




向かいに座る留学生がゆっくりと口を開き、漆黒の瞳が俺を捉える。


黒豹を思わせる留学生の目に、無意識の内に俺はゴクリと喉を鳴らしていた。





『私は歴史と伝統を誇るアシュメニア王国の第二王子だ。


友の恩人に対して、無闇に敵視するなど野蛮なまねはしない。』



「……」




こっ言葉が通じてないとか思わないのかな、この人。


真っ直ぐ俺を見て話してくんだけど。

つか凄ぇ睨んできてんだけど。



ワタシ、ニホンゴシカ、ワッカリマセーン。






『――…だがアレの事となれば話は別だ。


アレは私の物だ、邪魔する者は誰であろうと容赦はしない。』





何て言われたのかやっぱり俺には分からなかった。


けど留学生の得も言われぬ威圧に押され、思わず俺はこっくりと頷いてしまっていたのだった。



この時生まれた小さな誤解が、後々あんな事を引き起こしてしまうなんて。


俺はまだ、知る由もなかった。

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